財団法人 日本クリスチャンアカデミー
   
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機関紙「はなしあい」
 
第471号 2006年1.2月号

 [主な内容]

* 巻頭言 過去のない未来はない
  財団理事長 シュペネマン クラウス

*関西セミナーハウス活動センター
  第六回 開発教育セミナー
 「くらしの中の人権〜自分らしく生きる」
  2005年12月3日(土)〜4日(日)
  第四回 生命の意味を問う
 「生命学とは何か」
  2005年12月10日(土)

*関東活動センター
  いのちシンポジウム

  2005年11月23日(水)

*プログラム案内他


 

過去のない未来はない
シュぺネマン クラウス(
財団理事長

 2006年の初頭に当たり、心から新年のご挨拶を申し上げます。昨年中はアカデミー運動に多大の支援を賜り心より感謝申し上げます。今年も、どうか宜しくお願いいたします。

 昨秋、関西セミナーハウスで深い感銘を与えたターグングがありました。開発教育セミナーの一環として、ドイツ、ベルリンにある二つの高校から八名の生徒とその教員が来日し、ホロコースト研究についての発表をしました。ドイツで高学年の歴史授業で、生徒がある時代を選び、特別研究を行います。多数の生徒はナチ、ユダヤ人虐殺を選び、ベルリンのユダヤ人博物館や現在記念施設になっている旧強制収容所へ一週間程度の研修旅行を行い、資料を調べ、それを授業中や全校プロジェクトで発表します。2005年、学校の一大行事が第二次世界大戦終結60周年をテーマにした「記憶の日」でした。
 18〜19歳のドイツの青少年にとって60年以上も前のホロコーストは何の関係もない遠い歴史の出来事です。では、なぜ彼らが今、その汚点の時代、600万人のユダヤ人を犠牲にしたホロコーストに関心を持つようになったのでしょうか。生徒の研究発表と対話により、その動機になった出来事は、自分の学校にいるネオ・ナチの外国人蔑視的、反ユダヤ主義的な発言があった事によるものでした。それをきっかけとして、彼らは史実を確認するばかりでなく、なぜ大虐殺が起こったのか、その根拠は歴史にあったのか、強制収容所でユダヤ人殺害に直接係わった人々の人格形成はどうだったのか、またその事実を知りながら、なぜ大多数のドイツ人たちは黙していたのかなどの疑問点から、彼らは問題を究明しようとしました。
 そこに参加し、ドイツ人生徒の発表を聞いた日本の高校生と教員は感銘し、驚愕しました。受験勉強中心の日本の学校ではドイツの高校のように、歴史をゆっくり調べる時間的な余裕がないというのが、彼らの最初の反応でした。しかし、時間だけが問題なのでしょうか。ドイツの高校でも日本の学校と同様、先ず知識を教え、特に高学年では、大学入学資格を得るためのアビトウアーという最も難しい試験に備えなければなりません。
 双方の大きな差は、高校における教育のあり方や内容よりも歴史に関する異なった認識です。日本の社会にとって第二次世界大戦は交通事故のように、よく起こる偶発的な出来事なのでしょう。戦争中、日本人がアジアで犯した残虐な行為が現在の歴史と関係があるなどという点は、この社会で全く意識されていないのです。最近ドイツで「記憶の文化」という言葉がよく使用されています。その意味は、現在と将来の問題を解決するために、過去の良い点ばかりでなく、自らが犯した罪過も記憶し、その罪から学ぶべきだということです。「記憶の文化」の例として、多くの都市でナチに破壊されたユダヤ教のシナゴーグが再建されています。または、ベルリンのユダヤ博物館や昨年建築されたホロコーストの記念施設は高い関心を集めています。過去を忘れる人々は、変わることができず、同じ過ちを繰り返す可能性があるというのが「記憶文化」の意味です。
 そのような「記憶の文化」を背景にして、ドイツの高校生は歴史を調べ、現在と将来を構築する責任ある大人に成長するでしょう。引率した教員は、「このような歴史の授業により、多くの生徒たちは自主的に物事を判断し、正しい価値判断に基づいて行動するようになった」と述べました。新しくなる、新しくされる意味を考えさせられました。
(同志社大学文学部教授)

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