財団法人 日本クリスチャンアカデミー
   
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機関紙「はなしあい」
 
第478号 2006年10月号
[主な内容]

* 巻頭言 コミュニケーション不在の根にあるもの
  財団評議員 武田 利邦

*関西セミナーハウス活動センター
  ●第1回「人生の朝と夕べをいかに生きるか」
   弱さと老いの意味 〜人生の歩みに響く祝福〜
   岡山 孝太郎さん
  2006年8月18日(金)〜19日(土)

*開発教育セミナー
  ●沖縄スタディツアー
  2006年8月7日(月)〜10日(木)

  ●釜ヶ崎フィールドスタディ
  2006年8月18日(金)〜20日(水)  

*竹中 正夫先生を偲んで
  財団理事長 シュペネマン クラウス

第8回WCRP世界大会に参加して    

プログラム案内他


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コミュニケーション不在の根にあるもの
武田 利邦(財団評議員)

 様々な場面で対話が成り立たないと感じることがふえています。中島梓が『コミュニケーション不全症候群』(ちくま文庫)という本を書き「現代というのは、人間がかつて1回も知らなかったくらいに暮らしにくい時代であり、」その「特徴がもっとも端的に現れているのが、日本であり、いわゆる先進諸国である」と述べたのは1990年のことですからここ15年から20年、日本が「情報消費社会」(見田宗介)と呼ばれるようになってからのことです。
 その「症状」として中島梓は「先進国が思い上がって後進国、未開発国、開発途上国と呼ぶ国々には、登校拒否も、過食症も、対人恐怖症や家庭内暴力も、未成年の麻薬、暴力、性犯罪も離婚も精神障害も、異常な殺人事件もまた、『先進国』のようには存在しない。」として、この書物で、こうした問題を分析しています。その上で「コミュニケーション不全症候群こそが現代なのである。その特徴は」「『他の存在』への想像力の欠如だ」と指摘しています。  
一方、2005年度に日本の自殺者は32,552人となり、1998年度に3万人を超えてから8年連続で、3万人を越えています。この事態が示している日本社会の絶望とアノミー(無規範状態)に私たちはもっと目を向けるべきだと思います。
 2004年の34,427人をピークに05年にはわずかに減っているのですが、あいかわらず先進国ではダントツのトップです。年齢別に見たとき高齢者が3分の1を占めて多いのですが、04年から、05年にかけて、50歳以上の高齢者は減っている一方で、20歳から40歳にかけての自殺者はふえています。ここ何年もの間、こうした若者世代の死亡原因の第1位は「自殺」が占めています。
 「豊かさ」の中の絶望ですから、それは「豊かさ」の指標それ自体を問いかけるものと言ってよいでしょう。考えてみると、2003年の「9・11事件」はこうした若者たちの「絶望」の象徴であるように思えます。2000年には世界の自殺者の合計は100万人を越え、ますます増え続けているといいます。
 つまり、世界の「開発途国」では「地域紛争」と「自爆テロ」による死者の増大。そこから増え続ける難民と、飢餓による、とりわけ多くの子どもたちが命を奪われていき、一方の極である「豊かな国々」では「天国の中で地獄を生きる」(J.モルトマン)と言われる、高齢者と、若者の自殺が増大しているわけです。
 このように世界の現在を見たとき、こうした絶望(富)の存在の非対称性が何に由来するかは明らかです。すなわち20世紀初頭以来(あるいはそれ以前から)の「先進国」によるアフリカ、アジア、ラテン・アメリカに対する植民地支配の歴史です。そして、それを促したものは自己を「文明」とし、それ以外の他者を「野蛮」と決めつけた「西欧近代キリスト教文明」の「他の存在への想像力の欠如」ではなかったでしょうか。この歴史認識は必然的にキリスト教のメッセージ(つまり福音)のとらえ直しを促すことになると思います。
 「対話」と「コミュニケーション」の回復が、こうした時代には無力のようでありながら大きな意味があると思います。
(関東活動センター運営委員。農村伝道神学校講師)

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