財団法人 日本クリスチャンアカデミー
  
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機関紙「はなしあい」
 

第492号 2008年3月号


[主な内容]


巻頭言:敗者は復活するか ― 財団常任理事 上林 順一郎

 

*関西セミナーハウス活動センター

   ●2007年度第4回はなしあい「生命の意味を問う」 
       「食べる生命 食べられる生命
       〜宮沢賢治の『なめとこ山の熊』『フランドン農学校の豚』などを
       読み返しながら考える〜」

   ●2007年度第5回修学院キリスト教セミナー
      「新渡戸稲造の『武士道』の歴史的背景〜敗者の精神史〜」


*関東活動センター

   ●アカデミー新年の集い
       講演「クリスチャン市長奮闘す〜国立から伝えたいこと〜」



*退任に当たって ― 大津健一

*プログラム案内 他



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敗者は復活するか
財団常任理事 上林 順一郎

  イースターは春とともにやって来る。いや、春はイースターとともにやって来る、と言い直したほうが、ここ群馬県北部の吾妻の地ではふさわしい気がします。北に聳える県境の山々はまだ真っ白な雪をいただいていますし、時々吹きつけてくる風は凍えるような冷たさです。でも、患者はイースターとともに確実にやってきています。 昨今新聞紙上などで 「地域間格差」 という言葉が目にとまります。都会と地方との格差があらゆる面で強まっている現実があるからでしょう。「地方」でも「さらに地方」と言えるここ吾妻も 「地域間格差」 の真っただ中にあるようです。町の財政は万年赤字で学校の建て替えもままならず、人口は減る一方で高校を卒業するとほとんどの人が都会へと出ていきます。ご多分にもれず駅前商店街はシャッター通りになっています。
 昨年4月、町役場に住民票の手続きに行きました。「転入の手続きに釆ました」 と窓口で言うと、2,3人の職員が目を挙げてこちらを見たものです。「どちらからですか?」 「東京からです」 とたんに 「おぉー」 との声が周りから挙がりました。「変わったのが来た」 とでも思われたのでしょうか。とにかく、都会との 「地域間格差」 は確実にあります。群馬県は近年4名もの首相を輩出しながらも、地方の現実はかくも深刻です。
 とはいえ、「それでもどっこい」過疎の町も頑張っている、ということに気付かされてきた1年でした。格差は確実にあります。しかし、それをマイナスにとらえるのではなく、むしろ特長としてプラスに受け止めようとする気運を感じます。世にいう 「負け組」 の悲哀に浸るのではなく、「負けるが勝ち」 といった、どこか居直った明るさも感じます。それは、代々受け継いできたこの土地と伝統への愛着、幼い頃からともに育ってきた共同体意識、そしてここに住むしか選択肢はないという 「覚悟」 がなせるものでしょう。
 40数年間東京のど真ん中で生活し、そしていま 「地域間格差」 の敗者の見本のようなところに住んでみて、実はいま 「逆転の格差」 の思いすらしているところです。流行に踊らされることのない穏やかな日々、豊かな農産物が溢れメタボを心配することもなく、美しい自然とゆったりとした時間の流れに身をゆだね、くすんだような土地の歴史や風俗の中に豊かな人間の営みがあったことを知らされる日々、私の中では格差はむしろ逆転しているのです。 「すっかり田舎臭くなって」、という声も聞こえそうですが、政治、経済、行政、教育をはじめ、生活の仕方や意識までもが都会中心になり、大都市の思想と価値観とが日本中を席捲している現状に屈して、「格差の是正」 が都会化することと考えるなら、それは間違いという気がします。多くの地方にはある面での負の格差は現実にあるとしても、逆転している格差もあるのです。むしろその格差の意味を考え直し、格差からもう一度私たちの社会のありようと人間の生き方を考えていくことが必要ではないかと思わされています。
 敗者は復活する、それがイースターのメッセージです。アカデミーの活動が 「地方」にも届きうるのか、吾妻の田舎から考えてみたいと思っています。
 ここ吾妻にも春が来ているのですから。   (日本基督教団吾妻教会牧師)

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